神経心理ピラミッド

  高次脳機能障害の患者さん・対象者さんと会話していて、すれ違いを感じたことはありませんか。理解しようと努力しているのに、距離が縮まらない、結果的にケアが上手くいかないという経験がある方は多いのではないかと思います。

 高次脳機能障害を含む、認知機能低下を理解するために「神経心理ピラミッド」をご紹介します。「前頭葉機能不全 その先の戦略 Rusk通院プログラムと神経心理ピラミッド」という書籍に登場します。脳卒中・リハビリ領域の学会・論文などでしばしば扱われているので、目にされた方もあると思います。

以下にお示ししたものが、本家本元です。






 このピラミッドが伝えようとしているのは、認知機能の働き方には順番があるということです。つまり、下の階層にある機能は認知の働きの基礎であり、その上にあるすべての機能に影響を及ぼしていると考えます。ピラミッドの下が満たされてはじめて上の階層が充足されます。
 下から順に、目が覚めて、精神的エネルギーが保たれ、外界に興味が向き、集中でき、理解と表出ができてコミュニケーションが取れるようになります。そしてやっと、記憶ができるのです。そのうえで物事が順序立ててできるようになり、ようやく自己認識に至ります。
 高次脳機能障害を理解し、ケアに繋げるために大変有意義な理論であると私は考えます。ただ、本日初めて目にされた方は理解が難しい部分もあると思います。
 このため少しだけアレンジさせていただきました。これであらためて説明していきます。基礎が理解できた方は、ぜひ原著を確認くださることをお勧めします。





    


    



 

  

 このピラミッドが伝えようとしているのは、認知機能の働き方には順番があるということです。つまり、下の階層にある機能は認知の働きの基礎であり、その上にあるすべての機能に影響を及ぼしていると考えます。ピラミッドの下が満たされてはじめて上の階層が充足されます。

 下から順に、目が覚めて、精神的エネルギーが保たれ、外界に興味が向き、集中でき、理解と表出ができてコミュニケーションが取れるようになります。そしてやっと、記憶ができるのです。そのうえで物事が順序立ててできるようになり、ようやく自己認識に至ります。

 私たち人間同士、今の私たちのように普通にやりとりができる状態は、とても高い次元で脳が機能していること、わかっていただけると思います。

 ここに、各階層が充足されていない時の症状を示します。

 様々な、いわゆる問題行動が並びます。ただ、臨床上よく使われるこの「患者の問題行動」は、「結果的に起こっていること」に過ぎません。一見、問題点に見えますが、これは原因ではありません。注目したいのは、ピラミッドのより下の部分です。

 神経心理ピラミッドを用いての、対象者アセスメントを要約します。
  • 認知機能低下対象者の対応がうまくいっていないときには、現状を適切に把握できておらず、ピラミッドの上層をするよう強要している可能性がある
  • 神経心理ピラミッドが底辺から徐々に満たされていくよう、多職種が協働し対象者にかかわる
 神経心理ピラミッドは、主に「前頭葉損傷」に基づく症状を示しています。このため、認知機能低下患者の多くに活用できるといえます。
 ただし現場の医療・介護者がこれらを学び、身につけたとしても、対象者の問題行動が止むかは分かりません。しかし、対象者に対して『問題行動を止めて!』と強制するよりは良い結果になると考えます。
 
 もし困ったとき、この神経心理ピラミッドを思い出して、『目の前の患者さん・対象者さん、今どこの階層かな?』と考えるだけでも、かなり冷静になれます。困ったとき、思い出していただければ幸いです。

【参考文献】
立神粧子 「前頭葉機能不全 その先の戦略 Rusk通院プログラムと神経心理ピラミッド」P58~59 神経心理ピラミッド


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